東京高等裁判所 昭和31年(ネ)1231号・昭31年(ネ)1210号 判決
従つて、第一審原告のなした条件附契約解除の意思表示は適法であつて、これにより第一審原告と第一審被告との間の賃貸借契約は解除されたものとする。そして、第一審被告が右建物を占有していることは第一審被告の認めるところであるから、第一審原告にこれを返還すべき義務がある。尤も右建物は既に朽廃していることは原判決の理由において説示するところと当審における検証の結果によつて明かではあるが、ここにいう朽廃とは社会経済上建物としての効用を失つたという趣旨であつて、占有及び所有権の目的たりえないものではないから第一審被告がこれを占有している以上第一審原告に対してこれを返還すべき義務があることは明かである。また第一審被告が昭和二十六年一月一日以降一ケ月金七百八十円の割合による賃料の支払をしないことは、弁論の全趣旨に徴して明かであるから、第一審被告は昭和二十六年一月一日以降契約の解除に至るまで右賃料を支払い、かつ、翌日以降は同一割合の損害金を支払うべき義務がある。但し、右建物が既に朽廃していることは叙上説示のとおりであつて、おそくとも原審における最終の口頭弁論期日たる昭和三十一年三月五日までには既に朽廃していたと認めるのが相当であるから、同日以降は建物としての効用を全く失つたわけである。従つて、第一審被告がこれを占有し第一審原告に明渡義務を履行していなかつたとしても、直ちに第一審原告がその賃料と同一割合の損害を被つたとみることはできない。そして第一審被告が返還義務を履行しないことにより第一審原告がどの程度の損害を被つたかについては、これを算定すべき資料がないから、第一審原告の昭和三十一年三月六日以降の損害金の請求は失当としてこれを棄却すべきものとする。
(浜田 仁井田 伊藤)